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それから色々あったものの晴れて恋人同士になり、相棒期間も含めると、もう五年。
――早いもんだな……。
こんなことになるくらいなら、いつまでも格好ばかりつけていないで、さっさとプロポーズしてしまえば良かった。
――沙紀……愛してる。永遠に――。
徐々に大きくなっていくサイレンの音を聴きながら、龍二はそっと瞳を閉じた。
◇
私は取調室にて、ピシリとスーツを着こなした一人の男と向き合っていた。
「いつまでも黙ってないで、さっさと吐きなさい。そうしたほうが、アンタの身のためよ」
苛立たしげに前髪を掻き上げ、コツコツと指先で机上を叩く。
しかし男は、瞬き一つ寄越さない。それどころか、頬杖をついてこちらに身を乗り出してきた様は、どこか愉しげですらある。
「間近で見ると、ほんと綺麗だよなあ……。――なぁ沙紀、警察なんか辞めて、俺の女になれよ」
瞬間、身体と共に、勢いよく椅子を引いて立ち上がった。
「今のは聞かなかったことにしなさい、いいわね!?」
キーボードを打つ手を彷徨わせた新人刑事――記録係に向かって、震える声で凄む。
「くっ、くくっ……冗談だよ冗談。――こんな茶番にいちいち目くじら立ててるようじゃ、警察は務まんねえぞ沙紀チャンよ」
そんな私に対して、軽く一笑した男だったがそれは束の間のこと。落ち着いた声音と共に糸目を薄く見開き、上目を寄越した。
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