第五章

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 もう周りは上を下への大混乱である。ステージに尻もちをついた司会者、どよめく観客席、ヒステリーを起こして泣き出してしまった候補者もいる。  キイイン、というハウリングの音を響かせて、大音量はまだ続いている。わたしは足をもつれさせながら観客席の方へ走り出た。群衆の中で上を見上げる。  青空をバックに、誰かが立っていた。  なんだなんだ、とざわめきが聞こえる。みんなが上を見上げている。視線の先にあるのは、我が大学のシンボル、時計台。その上に立つ背の高い青年。そして、その手に握られたメガホン。やがて、青年がおもむろにメガホンを口に当てた。 「おい、お前ら!騙されんなよ!このミスコンは、コントロールされてるぞ!!!」  ざわざわ、とどよめきが大きくなる。ステージの上で湊さんが呆然と立ち尽くしているのが見える。  剣崎は嬉々として続ける。 「このイベントはあ、宗教法人○○による、出来レースじゃあああ!」  叫びと共に、剣崎の手を離れて白い紙切れが空を舞った。何十枚も何十枚も、青い空を背景にして白い紙が振ってくる。地面に落ちたそれをひらりと拾い上げてみる。それは、ファイナリストの名前を羅列したオッズ表だった。
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