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「でもわたしはな」
美都が微笑んで言う。
「あのステージの上から沢山の人を見渡して思った。もしあれだけ沢山の人から応援してもらえたとしても、それで自分が満たされるとは限らんのやろな。あんなに沢山いたら誰が誰だかもわからんし。だから、大事な人は本当に一握りでいいんかなって。考えてみたら、うちの親とかもな、竜宮城のウニやった時、あんたが一番かわいかったってすごい褒めてくれたの。嬉しかった。そういうの、今回のことがあるまで忘れてた。全体的に見て脇役でも、誰かにとって主役だったらいいんだよね。恋愛もな、いつか一人の大事な人が見つかってその人から大事に想ってもらえたら、それでいいなって」
それって…。思わず玲人君の顔を見たけれど、玲人君はただ穏やかな表情で読みかけの本に目を落としていた。まあいいか、とわたしは思う。いつか美都も気づくかもしれない。求めていたものは実はすでにもうすぐ近くにあったということに。そこまで考えたところで、頭の片隅で何かがチラリと光った。
そういうことなんだろうか。
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