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王の血族。
かつて天から降り立った神をも超越した6つの存在。王の父、母、兄、弟、姉、妹。そのうち母を滅ぼしたのは亡国の王女だったという。父を滅ぼした男とは恋仲にあり血族達を討ち果たした後には結婚を約束していた。結局その約束は果たされなかったけれど。
王の血族を滅ぼした者達は皆その身に呪いを受けたから。
それは本当に滅ぼしたのか? あるいはただ取り込まれただけだったのかもしれない。彼らは不老不死になり永遠にその呪いにさいなまれることになった。王女が受けた呪いは男を貪り食うことだった。それは文字通りの捕食でもあり生殖行動でもあった。女は食った男との間に子供を儲け、子供は必ず女であり食った男の力と同等かそれ以上の力を持って生まれた。その娘達もまた不老不死であり何千何万と生まれてやがて一つの国を形作るようになった。王女の国は滅び別の国が生まれた。それが母の国だった。
彼女の娘達は子供を創ることはできなかった。娘達は王女のことを母と呼び実際母の国で子供を創れるのは彼女だけだった。
私はデルピオネ。そんな娘達の一人だった。姉妹からは予言のデルピオネと呼ばれている。
遠い遠い未来。
運命を守って運命通りの未来にたどり着いた私は御褒美をもらえることになっていた。
「貴方のことを愛しています」
うぶな彼が顔を真っ赤にしてそう言うのを私は何度となく見てきた。
はっきり言って顔はぱっとしないし才能もあまりないけれど会った瞬間この人だと分かる。彼は私にない純粋さを持ち合わせていたから。私が最初の頃持っていた、でも何度も何度も未来を見ることで失ってしまった純粋さを。彼と出会うことで私はそれを取り戻せる。
私は未来を見る力があった。でもその未来は仮の未来。ちょっと変わってしまうと見えなくなる。変わってしまった未来は何もしなくてもそのうち元に戻るけれどあまり変えすぎると中々戻らなくなる。私の能力は未来を見ることであり私の役目はその未来を守ることだった。未来視と称してその未来を教えると同時にその未来になるように誘導するのだ。予言と言いつつ見える未来に誘導しているのだから騙していると言っても間違いではないだろう。実際にその未来になるのだからそれがばれることはないが。というか未来視でばれないことは確定していた。
重要なのは私の見る未来を変えないことだ。だから私は周りの皆がどれほど酷い目にあうか見えていたとしても決してそれに関わることはしなかった。必然的に他人からは距離を取るようになっていた。
・・・
「その力を自分のために使えるなら私はもうお前を保護する必要はないわね」
お母様はそう言うとまたお気に入りの娘を宮殿から追い出した。今回の娘は2枚羽の天使のようだった。
「お、お母様それはどういう…」
可哀そうに娘は何を言われたかわからず狼狽している。これが傲慢な娘だったならいい気味ですんだのだけれど今回の娘はそうではなかった。未来視でちょっと覗いたところ心の根の優しい娘の用だ。他人に自分の運命を任せてしまうところは気になるけれど悲劇を生む生贄の娘としてはそれもまた好ましい。踏みにじられるのが純粋なものであればあるほど悲劇はより美しくなるのだから。
多少可哀そうではあったが私はいつものように傍観するに留めた。
「言った通りの意味よ。貴方は自分の力を自覚した。だからもうここにいる必要はない」
この国には呪いがかかっていた。この国の娘達は誰も子供を産めない。子供を産めるのはお母様だけだった。そして生まれてくるのも娘だけ。だからお母様が飽きてしまった娘は娘達の間で母子の契りを結んで面倒を見るという独自の文化が出来上がっていた。これからは彼女もそうやって新しいお母様を見つけなくてはならないだろう。
「デルピオネ、あの娘は? 」
私の傍らでそれを見ていたエキドナが言った。エキドナは4枚羽の天使の姿をしていた。一応私と母子の契りを結んだ母と言うことになる。別に私が望んだわけじゃない。運命でそう決まっていたから従ったまでのことだ。
「母子の誓いを立てる気ですか? 大した力はないようですが」
何故真っ先にそう思ったかと言えばそうなることが運命で決まっているからだ。こう私が答えるのもまた運命。そしてエキドナが聞く耳を持たないのもまた運命だ。
「余計なことだわ。運命で決まっているんでしょう? 」
けれどエキドナにはそんな私の考えなどお見通しの用だった。冷めた瞳でそう言った。もう数百年も一緒にいるから慣れたものなのだろう。
「確かにお姉様はあの娘と母子の契りを結ぶことになります」
「初めからそう答えればいい」
エキドナはそう言うと捨てられた少女の元に向かった。
私とエキドナは母子の誓いを立てているが呼び方はお母様ではなくお姉様だった。そこは母となる者の趣向による。お母様と呼ばせている者もいればお姉様と呼ばせている者もいた。エキドナは母と呼ばれるのが好きではないのでお姉様と呼ばせている。お母様はお母様ただ一人と言うこだわりがあるらしかった。
「可哀想に。何も告げられず宮殿から追い出されてしまったのね。お母様は言葉足らずだから」
エキドナは同じ天使との子供と言うことで彼女を受け入れることにしたらしい。エキドナは天使の姿をしているが天使ではない。4枚羽の天使とお母様との子供だった。相手の能力を引き継いだ子供を創るのがお母様の力だ、天使に性別はないが相手が男だろうと女だろうとそれどころか生き物でなくてもお母様は子供を創ることができた。素直に性交することもあれば文字通り食らっても子供を創ることもできるのだ。
「私はエキドナ。貴方は? 」
エキドナは私に対すると高圧的な態度とはうって変わって優しい声で話しかけている。
「あの、プレセぺといいます…」
プレセぺと言う娘は引っ込み思案な性格の用だった。おどおどと返事を返している。普段ならエキドナはこういうタイプは嫌いなのだが妙に優しく接している。ニコニコと穏やかな笑みを浮かべていた。同じ天使との子供ということで甘くなっているのか…いや、そうではないだろう。多分これがプレセぺの力なのだ。母の国の娘達は無力に見えても皆特別な力を持っていた。それは直接的な力とは限らない。私が未来をみることができるように。
「そうプレセぺ。貴方、私の娘になりなさい」
お母様は不老不死であり娘達も不老不死。娘達の数は数千数万にも膨れ上がっていた。それだけいれば合わない姉妹もいる。母子の誓いはそういう争いから娘達を遠ざけるのためのものでもあり逆に強そうな娘を味方に引き入れるためのものでもあった。エキドナはこの国で虐げられぬよう逆に虐げる側になるよう率先して戦力を集めていた。けれど今回は珍しく保護するためにプレセぺを迎え入れることにしたらしい。プレセぺの力がそう誘導したのだ。
プレセぺは生まれたての雛鳥が親を刷り込まれるような瞳でエキドナを見ている。彼女は決してエキドナを裏切らないだろう。運命でもそう決まっている。けれどプレセぺがそう思っていたところで運命は破滅へと突き進むのだけれど。
「彼女を受け入れたことは、いえ彼女が現れたことは、貴方の破滅はそう遠くないということですよエキドナ様」
私は心の中でそう呟いた。
母の国の娘達は大体皆悲惨な最期を迎える。不老不死なのに死ぬということはそういうことだ。終わることがない私達の命が終わるのだから不幸な結末があるということだった。母の国でそれなりの勢力を誇っているエキドナもそれは同じだった。そしてどうやらエキドナにとってその転落の始まりがプレセぺとの出会いなのは運命で決まっていることのようだった。
別にプレセぺが悪いわけではない。そういう運命なのだ。そしてその運命が回り始めたということは私が運命の彼に巡り合う時も近づいていているということも意味していた。たとえその先に死が待っていたとしても私は高揚する気持ちを抑えられないでいた。
・・・
「ちょっとあの子なんなの。お姉さまに贔屓されて」
オルトロスがプレセぺに聞こえるように言った。
「戦う気もないなら邪魔だ」
ケルベロスもそれに同意する。
プレセぺは申し訳なさそうに謝るが無視されている。そう、本来のエキドナの性格なら彼女たちのようにプレセぺを嫌っていただろう。
どうやらプレセぺの力を見誤っていたらしい。誰かに好かれやすくなるのが彼女の能力ではなかった。その証拠に他の姉妹。武闘派の連中からは受けが悪かった。好かれやすくなるのが彼女の能力なら彼女達にも好かれていたはずだ。
考えてみれば当たり前だった。絶対の能力など存在しない。絶対の死を与える能力を持つ者がいてもそれを圧倒する力を持っていれば効果はない。プレセぺは2枚羽の天使の力、エキドナは4枚羽の天使の力を持っている。エキドナがそれに影響されたなら自分で気が付くだろう。そうと分かれば苛烈な性格のエキドナのことだ。烈火のごとく怒り狂うに違いなかった。勝手に心を惑わされたのだかから許せるはずがない。でも何故かエキドナはプレセぺを気に入っているみたいだった。
プレセぺの本当の力は何なのか。それを知ることができたのはあの化け物とプレセぺが仲良くしているらしいと分かった時だった。
「お前またあの化け物のこところにいっていたのか?」
私は思わず苦言を呈していた。
「化け物って…もしかしてすーちゃんのことですか? 」
能天気にプレセぺは答えた。
「すーちゃんは化け物じゃないですよ。お友達です」
普段気が弱いプレセぺが珍しく反抗して見せる。それは友達を化け物と言われたからだろう。全く忌々しいまでに心根の良い娘だった。だけど…
あれは駄目だ。あれはよくない。
力のあまり大きな存在の前に絶対の能力は無い。それは私も例外ではなかった。あまり大きな力の存在の未来は見ることはできない。それが影響した結果だけなら見ることができたけれどあまりに近すぎると不確定要素が増えすぎてみることができなくなる。運命が行きつく結果は分かるけれどその詳細は分からなくなる。私がプレセぺの能力を見誤った原因もあの化け物だったのだろう。
それは原祖の化け物だった。いや化け物ですらない理だった。
まだ王の血族達が訪れずこの世界が別の理で支配されていた頃、それがあっては人間達は栄えることは出来ぬとお母様が食ってしまった理。そこから生み出されたのか彼女だった。お母様の4番目の子供であり最初期に生み出した娘の一人だった。最初期に生まれた娘達はこの世界に本来存在した、王の血族達がやってくる前に存在していた現住の神々と殺し合いほとんどがいなくなってしまった。今残っているのはあの化け物くらいだ。つまり今この国に、いやもしかしたらこの世界にあの化け物を止めることができるのは存在しないかもしれない。それくらい危険な存在だった。それなのに事もあろうかプレセぺはその化け物と仲良くなっているようだった。
「すーちゃんには意思があります。寂しがり屋で、とても優しい。私たちと同じお母様から生まれたお母様の娘です」
別にそう思うのは勝手だが、それは多分プレセぺが邪気のない存在だからだろう。僅かでも邪気があれば瞬く間にあの化け物に食われてしまう。あれはそういう化け物だ。
彼女の元になった理は既にお母様が食べてしまって今は存在していない。ただあえて今の理で一番近いもので例えれば勧善懲悪だと言われている。
善い行いをしたものは良い目にあい、悪い行いをしたものは悪い目に合う。
でも人間は良いことだけをして生きていくことができない存在。だからお母様はその存在を食べてしまった。そしてその残滓があの化け物だった。全ての罪を食らう者。罪のない者しか近づくことは出来ぬ存在。プレセぺは心根の良い娘だった。それはもう異常なくらい。だから食われずにすんでいるが他の者であればそうはいかない。私も見つかったらすぐに食われてしまうだろう。私がいずれ結ばれるであろう彼ならばあるいは仲良くなれるかもしれないが。
しかしそんな危険な化け物と仲良くできるということはプレセぺの力を知るためのヒントになった。彼女は他人を思い通りにするという気持ちはない。そんな気持ちがあればあの化け物に食われる。人より優しくしてほしいなどとも思っていない。思っていればやはりあの化け物に食われてしまう。彼女は何も望まない。ゆえに何も起こらない。だからエキドナ以外の姉妹は彼女に好意的にはならない。最後に私が彼女の能力に気付かなかったことが決定的な証拠だった。彼女の能力、それは望むように運命の歯車が回る力だ。私が見る未来は本来あるべき未来。そしてその正規の未来に向けて無欲に彼女は運命の歯車を回す。だから私は彼女の能力に気付かなかったのだ。
ただそうなっているのはプレセぺが無力だからだ。もし仮に彼女が私利私欲のためにその能力を使えばそうなることも可能だろう。そしてそれを実際に私利私欲に使ったのがエキドナだった。
プレセぺが自分に好意を特別な行為をいだけば自然と彼女はエキドナの幸せを祈る。それが分かっていたからエキドナはプレセぺに優しく接した。私はようやくそれに気が付いた。
そしてエキドナに男ができた。
・・・
エキドナと母子の誓いを立てた娘達が集められたのはそれからしばらく後のことだった。
「今からこの男に名前を授けます」
エキドナが満ち足りた笑みで男を紹介していた。あの傲慢なエキドナからは想像もできない温和な笑顔だった。プレセぺの力を借りてよほど満足できる男を手に入れたらしい。
母の国の娘達は普通の人間達からは魔女のように聖女のように神の使いのように思われていた。母の国の娘達は人間達に人知を超えた力を与える存在だからだ。天使とか悪魔とか力の強い存在を人の形にしたのが母の国の娘達だ。何らかの代償や契約にしばれれずただ気に入られるだけでその力を借りることができる。そして時には英雄の名前を与えることもできる。
「ヘラクレス。今日から貴方はそう名乗りなさい」
英雄の名前はここではない別の世界の英雄の名前だった。別の世界の英雄の名前をあたえることで別世界の英雄と同じ運命。同じ試練。同じ宿命を与えることができる。力がない者が受け取れば破滅するが力ある者が受け取れば人知を超えた存在になることができた。エキドナもまた英雄の名を知る者だった。
「これであなたはクロノスの呪いから解放される。あなたが父を殺すことはないし殺したとしてもクロノスの呪いを受け継ぐことはないわ」
「すまない。これで私は父の国の呪いを受けずに済む」
ヘラクレスの名を与えられた男は感謝して頭を下げた。ヘラクレスはエキドナの目に叶っただけあって容姿も体も非の打ち所がなかった。心根も正しく野心に満ちてもいた。
母の国と道用、父の国は王の父の呪いを受けていた。それが子供殺しと親殺しの呪いだ。父となった者は子供を殺さずにはいられない。子供もまた親を殺さずにはいられない。そして子供が父を殺した時その力は呪いは子に継承され呪いは永遠に続く。ヘラクレスはその運命から逃れることのできる英雄の名前を探して母の国を訪れそしてエキドナと恋に落ちたらしい。
「私からその名を得たいがために私と契約することにしたのでしょう?」
試すようにエキドナがいった。
「そんなことはないよ。僕は君のことを心から愛してるんだ」
とても真剣に、馬鹿正直にヘラクレスは答えた。
「どうだか、その名前は恋多き名前なんだから」
「僕は君だけを愛すると誓う」
そう言って2人は笑いあった。とても幸せそうに見えた。私達姉妹は拍手で2人を祝福した。私だけはそんな綺麗事ですまないことを知っていたけれど少なくともこの時点ではヘラクレスはエキドナを愛しているようだった。英雄の名を受ければその英雄の運命に引っ張られ性格も性質も変化していくが現時点では。
「母の国の娘達は子供をなすことはできなかったけれど代わりに愛した男性は娘にとっての恋人になり、そして子供になり、永遠に守り続ける。不思議な力を持った母の国の娘たちは力を求める男たちにとって渇望と羨望の的だわ。貴方達もきっと幸せを手に入れることができる」
エキドナがそう宣言すると拍手は一層強くなった。
こうしてエキドナは祝福されて母の国を離れることになった。
「プレセぺ、ごめんなさい。」
最後にエキドナは言った。
「私はあなたのことが羨ましかったの。私は力を求めて作られた存在。でもあなたは愛し合ってできた子供だったから」
よく言うと私は呆れてしまった。彼女の力を利用して男を捕まえたのによくもまぁそんなことを言えるものだ。けれど素直なプレセぺはすっかり感動して目を潤ませてしまっている。
「お母様は、いい男だったから私ができちゃったと言っていました。だから私は出来損ないなのだと思っていました」
「私の父は4枚羽の強い天使だった。だからその力を得るため私は作られた。私はそれがコンプレックスだったわ。いい男だから上等じゃない。子供って言うのは本来貴方のように生まれる者でしょう? 私は貴方の方が羨ましかったわ」
二人は穏やかに笑いあった。
それは確認の会話だった。プレセぺがエキドナの真意に気が付いていないかの確認の。プレセぺは当然何も気が付いていない。それが分かってエキドナは安堵している。これでプレセぺがエキドナの不幸を望むことはない。
「ありがとう、さようなら、私が愛する人と出会えたのは全部あなたのおかげよ。今度からはその力を自分のために使いなさい」
それでもプレセぺを利用したことに多少の後ろめたさがあったのか、それとも情があったのかエキドナはそう言い残してプレセぺの元から去った。
「…? 」
プレセぺは何故エキドナがそんなことを言ったのか分からない様子だった。ただ名残惜しそうにエキドナの後ろ姿を眺めていた。
名残惜しそうに…
エキドナは最後にミスを犯した。
・・・
エキドナが帰ってきた。
美しかった体はずたぼろに引き裂かれ継接ぎだらけの蛇の体で、母の国の娘ではありえないはずの我が子をその手に抱きかかえ…
「あの男のせいだ…あの男が私の体を蛇に変えた…子供を産めぬのなら埋める身体をくれてやる、そういって私の体をバラバラにして弄んだ! 子供を孕んだ腹を私に植え付けた! 」
帰ってきたエキドナの心は完全に壊れていた。
介抱しようと近寄った娘達をにらみつけ、殴り、罵倒した。
「卑しい母の国の娘達…お前はこの子を奪うつもりなのだろう? でもそうはいかない。この子はあの男を殺す。そのために生まれた愛しい愛しい私の子なのだ! 」
エキドナはそう言うと狂ったように笑った。
娘達は変わり果てたエキドナに戸惑い怒り、そして報復にヘラクレスを討とうとした。ヘラクレス12の試練。そこに立ちはだかるのはエキドナの子供達。でもそうやってヘラクレスに挑んだ娘達は帰ってくることはない。それがヘラクレスにまつわる運命なのだから。
「どうして…」
プレセぺがエキドナの子供を震えながら抱きかかえていた。復習に赴き帰ってこぬ姉妹たちを呆然と見送っていた。
「すーちゃんだったか? もう会いに行くのは止めた方がいい」
ケルベロスがプレセぺに言った。
「お前はもう罪人だ。罪を食らうあの化け物はお前も見つけ次第食らうだろう」
どうやら彼女も気づいていたらしい。エキドナは最後にミスを犯した。それはプレセぺに嫌われなかったことだ。またエキドナと一緒にいたいと願わせてしまったこと。プレセぺがエキドナが帰ってくるように望めばそれは叶う。彼女の望む運命に導くのが彼女の能力なのだから。
「私のせい…なのですか? 」
プレセぺは愕然とつぶやいた。
でもそれは半分間違いだった。力の強い者は完全に能力の影響は受けない。私はそれを知りつつ教えなかった。それが運命だから。
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