絡まる恋

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 家の玄関で凛と別れ、晴香と二人で帰宅すると母はまだ帰宅していなかった。朝、出勤前に母がセットしていた炊飯器はすでに炊き上がっているらしく、炊きたての白米の香りがキッチンから漂ってくる。 「カレー(あった)めよか」 「うん」  今日の夕飯は、昨夜の残りのカレーだと母から聞いている。母を待たずに食べ始めることにした。二人とも空腹だったし、待てなければ先に食べていて良いと普段から言われているからだ。  制服から部屋着に着替え、うがいと手洗いを済ませてキッチンに集まる。颯太が冷蔵庫からカレーの鍋を出してコンロに置くと、晴香が野菜室を開けた。 「サラダ作ろか」 「ある?」 「一応」  と、残り物のレタスを晴香が取り出す。トマトもキュウリも無しの寂しいサラダになりそうだが、ないよりはいいだろう。 「お願いしてええ? 俺、こっちやっとくわ」 「うん」  鍋の底が焦げ付かないように気をつけながら、カレー皿を取り出し炊きたての白米をよそう。晴香はレタスを洗って、適当な大きさにちぎり始めた。 「ただいまー」  とそこで、玄関から母の声が聞こえてきた。 「遅くなってごめんねー!」  いつものように賑やかに言いながら、短い廊下を抜けてリビングダイニングキッチンに姿を見せる。 「お帰り」 「お帰りなさーい」  颯太と晴香はそれぞれの作業の手を止めずに出迎えた。 「母さんもすぐ食べる?」 「そうするわ。もー、お腹ペッコペコ」  颯太の問いかけに、母はお腹の辺りをさすりながら答えた。颯太が「りょーかい」と頷くと、「あ、これも温めといて。カレーと一緒に食べましょ」とスーパーのレジ袋が差し出された。レタスを千切っている晴香の後ろから手を伸ばし、それを受け取る。手を洗いに洗面所へと足を向けた母を見送り、颯太はレジ袋を覗き込む。出来合いのコロッケが四つ入っていた。  四つ中、三つをオーブントースターに入れて温める。残りの一つは父親の分だ。それはプラスチック容器に入れたまま冷蔵庫に仕舞う。そろそろ帰宅しても良い頃だが、学期末だから遅くなるのかもしれない。 「二人ともありがとね。さあ食べましょ!」  洗面所から帰ってきた母が、あらかた準備の終わったテーブルを前にそう言った。
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