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伝説の剣
何て事なく、その剣は石の台座から引っこ抜けた。
手応えもクソもない。芋を引き抜くよりも楽な所業だった。
周りの観衆がテンヤワンヤになる中、俺は務めて、「また俺何かやっちゃいました?」という顔で突っ立っていた。
「伝説の勇者様だ!」
「まさかこんな事が起こるなんて!!」
「爺ちゃんにも見せてやりたかったなぁ!!!」
まったく、伝説の剣を引き抜いたくらいで大袈裟な。ま、勇者の雄姿を目の当りにしたら、市井の人々がこうなってしまうのは仕方のない事かな。
観衆の拍手喝采を全身に浴びていると、人混みを掻き分け、商人っぽい中年男が近づいて来た。
「勇者様、この度はおめでとうございます。それでは、伝説プランのご説明をさせていただきますね」
ん?
「伝説の剣の契約期間は2年となっておりまして、更新月以外に解約をした場合、別途解除料金が発生いたします」
んん?
「そのため、他社の伝説の剣に乗り換える際は十分にご注意ください」
んんん??
「よーし、くす玉設置し直せ~」
「剣はこんな感じで?」
「もうちょい深めに刺さなきゃダメだろ、お前さぁ」
「それでは、詳しい契約はコチラの部屋で。あ、本日ご身分を証明できる物、なにかお持ちですか?……はい、そちらの通行手形で大丈夫ですよ!ではお座りいただいて、まずココにお名前とーー」
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