水の中…

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水の中…

冷たい。寒い・・・。 ここは・・・どこ・・・? 水の中・・・? 僕を起こすのは、誰・・・? 望。相馬望よ。 目覚めるのだ。 そなたには、逢わねばならぬ者 守るべき者がおる。 私は、そなただ。 であるから、 目覚めるまでは、 私がそなたの代わりを務めよう。 目覚めるのだ。 私は、そなたが目覚めるのを ずっと待っておった。 ずっと、ずっと…、 長い時間。 逢わなければいけない人、 守らなければいけない人…って誰? 君は、僕? …わからない。 頭が痛いよ。 もう少し…眠らせてくれ…。 寒い…。 誰か…、温めて…。 若君様。 どうぞ、 いつまでもお健やかに。 私は永久に、 あなた様と共におります…。 お慕い申し上げております。 君は、誰? 僕の手に触れたのは、君? …温かい…。 この手を、 …知っている…気がする。 ずっと前…、 どこかで…いつだったろう…? ずっと、 ずっとまえ… 白くて、 華奢で滑らかな肌をした…手。 いつも私を控えめに 見つめていた美しい…瞳。 そなたは…芙蓉? …芙蓉? いや、違う。 あの子だ…。 綺麗な蝶を追いかけて見た その先にいた かわいい娘。 僕はあの娘と会うはずだった…。 なぜ、逢わなかった? 逢えなかった…? 彼女が来なかった? いや、違う。 僕が行かなかった…? いや、行ったんだが、 交通事故に遭って…。 …海に…落ちた…。 …そうか。 だから水の中に…。 あれからずっと ここにいるんだろうか? …逢いに行かなくちゃ。 あの娘が待っている…。 きっと、 待っていてくれる。 …いや、待っていたのは私だ…。 長い長い間… 蓮を待っていた…。 行こう。 起きなければ… 望の意識は、回復した…。 長い時 ひとりぼっちで 生きてきた    君だけを求め 待ち続けてきた ああ君は いつも側に いてくれた   待たせていたのは 私だったね
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