目覚め

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目覚め

相馬さん。 相馬望さん。わかりますか? 望の目が、 しっかりと看護師の顔を捉えた。 はい。・・・ここは、どこですか? 静岡○○病院です。 相馬望さんは、 1年半も意識がなかったんですよ。 ・・・まだ、 起きないでください。 ドクターを呼んできます。 望は、 天井を見つめながら考えていた。 夢だったのだろうか・・・? あまりにも生々しかった。 声も、 手に触れた感触も残っていた。 僕に似た・・・ いや、そっくりの ・・・声。 そなたの代わりは・・・、 そなたって、 時代劇みたいな しゃべり方をして・・・。 私はそなただって、 どういうことだ?  だめだ。頭が働かない。 でも、 行かなくては・・・。 あの娘が待っている。 あの娘を探さなくちゃ。 彼女はきっと待っている。 近くにいる・・・。 そんな気がする。 ・・・でも、 彼女と会ったのはNYだ。 どうして静岡に? ・・・とにかく、 病院を出なければ・・・。 携帯・・・。 望は、 ドクターが来るのを 待ちきれずに起き上がった。 頭が少しふらついたが、 こらえた。 見回すと、 すぐ傍らのテーブルの上に 携帯があった。 僕の? 充電はされているようだった。 誰に電話する?従兄(にい)さん? いや。おばあさま・・・?平木常務! 電話帳を開くと、 電話しろといわんばかりに 平木社長の名が トップにあげられていた。 平木社長?社長? 常務が社長になったのかな? 意識がない間に、 いろいろあったんだな・・・、 きっと・・・ RRRRRR・・・・ 平木社長ですか。 望です。 ええ、相馬望です。 さっき意識が戻って・・・、 枕もとのテーブルの上に 携帯があったので、 かけました。 退院したいんです。早く。 探したい人が、いて。 来ていただけますか? 「望!本当なのか? “身代わり”じゃないよな・・・ そうか・・・ 意識が戻ったか・・・ よかった・・・」 平木社長は、 電話の向こうで 泣いているようだった。 「望、スマンが すぐにはちょっと行けないんだ。 とりあえず人をやるから、慌てるな。 検査をしないと 退院だってできないだろう? ドクターのOKが出たら 手続きをして、 そうこうしているうちに 俺も行けると思うから。 それに、 人を探すといったって、 すぐに外出は無理だぞ。 寝たきりだったんだから。 まあ、行ってから 話すことにしよう。 いろいろあったんだ。 いろいろな・・・。 ああ、それから、 家と会長には 俺から伝えるから、 電話しなくていい。 目覚めたからって、 いきなりあちこち 電話しまくるなよ。 驚かせてしまうし、 お前も疲れてまた倒れるぞ。 わかったな。」 「・・・わかりました。 無茶言ってスミマセン、 忙しいのに。」 そうだよな・・・ 僕は何を焦っているんだろう? あんな夢を見たせいかな・・・ 夢・・・ だったんだろうか・・・? それに・・・ 平木社長が言葉を濁したのが 気になった。 僕が眠っている間に、 一体何があったのだろうか・・・。
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