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 西方のとある国で、国王の急逝と、皇太子の追放劇があった。  国王の死因は、長年に渡って受け続けた心労が持病を悪化させたことによるものだが、これを契機ととらえた反国王一派が、架空の政治犯罪をでっちあげて皇太子を落とし入れ、王位継承権を剝奪したのである。  皇太子は島流しの刑に処せられ、新しい国王にはその一派の主導者である人物が選ばれて即位した。  今、この国の都は、三か月後に執り行われる新国王の即位式に向けての祝賀ムードで溢れている。  下々(しもじも)の者たちの反応は様々だ。犯罪を犯した皇太子がいなくなって喜ぶ者もいれば、そんなことをあの皇太子が本当にやったのかと疑う者も少なからずいた。また、景気が良ければどちらでもいいと思う者もたくさんいた。  そんな具合で、新しい国王はこの流れのままに即位式を迎えるだろうし、国民のほうも、少々疑念を持ちつつそれを受け入れるだろう。  騙したいものが騙し、騙されたいものが騙されるという、まさにその通りのことかもしれない。
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