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「ゆーくん、オムライスおいしい?」
「うん、おいしい」
無邪気にオムライスを食べる息子は、そのオムレツが、たくさんの卵を破壊して作られていることに無頓着だ。
「ゆーくん、お口、ふきふきしましょうねー」
「んー」
わたしはゆーくんの口を拭き、この子に関われることの幸せに浸る。口の周りを血のような赤いケチャップまみれにしても、わたしは何度も、この子のケチャップを拭きとって、この身が尽きるまで何度も手を汚すのだろう。
ここからさきは、永遠につづくイタチごっこだ。
それでもいい。
わたしはこの子の前途が、明るい未来であることを望む。
どうか「生まれてはいけない人間」だったのだと、己を否定することのないように。
そして、願わくは、わたしがこの子の将来のガンになりませんように。
何者でもなかったわたしを母親として産んでくれて、なにも知らなかったわたしに、幸せを教えてくれた青い鳥自身が幸多からんことを、わたしは願ってやまないのです。
【了】
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