5人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
和也は左官屋の仕事をした後の帰り道だった。彼は目の前の男が声をかけてきたのに気が付いた。
「私は助けます」
和也はそれには答えずに歩いた。
「君の恋人を襲うぞ」
和也は変な人だと思いながら歩を進めた。
「恋人がどうなってもいいのか?」そのスーツ姿の男は言った。
「まさかりえのこと?」
「りえという名前だったか」
その男はせせら笑いをはじめた。
「どうすればいいのですか?」
「十万円出してくれない」
この危ない男はりえに何かするのではないか、と心配になって和也は思わず一万円を渡してしまった。
帰宅するとりえは無事だった。
「よかった」
「う?」
「脅されたのだよ。君に危害を食わされそうだったので一万円を渡したのだ」
「それは騙されたのではないの?」
「そうか騙されたのか」
「いやだね」
「騙された」彼はその男に騙されたことを認めた。和也は左官屋なので一万円くらいへでもないというか、というわけではなかった。彼の財布の中身への影響に関してはかなり厳しかった。
りえは無事なので結果はいいことにしたが、彼は残念であった。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!