和也の恋人

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 和也は左官屋の仕事をした後の帰り道だった。彼は目の前の男が声をかけてきたのに気が付いた。 「私は助けます」  和也はそれには答えずに歩いた。 「君の恋人を襲うぞ」  和也は変な人だと思いながら歩を進めた。 「恋人がどうなってもいいのか?」そのスーツ姿の男は言った。 「まさかりえのこと?」 「りえという名前だったか」  その男はせせら笑いをはじめた。 「どうすればいいのですか?」 「十万円出してくれない」  この危ない男はりえに何かするのではないか、と心配になって和也は思わず一万円を渡してしまった。  帰宅するとりえは無事だった。 「よかった」 「う?」 「脅されたのだよ。君に危害を食わされそうだったので一万円を渡したのだ」 「それは騙されたのではないの?」 「そうか騙されたのか」 「いやだね」 「騙された」彼はその男に騙されたことを認めた。和也は左官屋なので一万円くらいへでもないというか、というわけではなかった。彼の財布の中身への影響に関してはかなり厳しかった。  りえは無事なので結果はいいことにしたが、彼は残念であった。                      (了)
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