きっかけ

3/6
前へ
/6ページ
次へ
「何だか、最近、熊が目について」  言葉にすると、馬鹿げていた。 「選択科目が同じのが多いんだよね」  颯太も同じことが多い。だから、最初は単に隣に座る人だったのが、友達になり、最近ではランチを一緒に食べることも多い。  今も学食に向かう途中だ。 「うん。ただ、よく目が合うような気がして。自意識過剰かな」 「いや、気をつけた方がいいかも。ボディガードしてあげようか」 「えー。颯太じゃ無理でしょ」 「これでも、ボクシング習ったことがあるんだ」  シュッシュッと腕を突き出した。 「意外」  颯太はどちらかというと、男性モデルのような外見だ。足も長くて、かっこいいが、強そうには見えない。案外、細マッチョなのかもしれない。 「外見ではわからないから、損してるね」  そう言った時、急に目の前に人が飛び出してきた。サングラスをかけ、マスクをした男性二人だ。派手なジャンパーの背中では龍が踊っている。いまどき、こんな人がいるんだ。しかも、この大学に。 「ねえ、カノジョ。今から、どこ行くの?」  セリフまでベタすぎる。  思わず、颯太の方を見た。 「何? 彼氏?」  ヤンキーの一人が颯太に顔を近づける。  颯太がぶんぶんと手を振った。 「単なる同級生です。はい」  ぺこぺこしながら、颯太は去っていく。 「ちょっと」  ボディガードの話はどこに行ったの?
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加