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「何だか、最近、熊が目について」
言葉にすると、馬鹿げていた。
「選択科目が同じのが多いんだよね」
颯太も同じことが多い。だから、最初は単に隣に座る人だったのが、友達になり、最近ではランチを一緒に食べることも多い。
今も学食に向かう途中だ。
「うん。ただ、よく目が合うような気がして。自意識過剰かな」
「いや、気をつけた方がいいかも。ボディガードしてあげようか」
「えー。颯太じゃ無理でしょ」
「これでも、ボクシング習ったことがあるんだ」
シュッシュッと腕を突き出した。
「意外」
颯太はどちらかというと、男性モデルのような外見だ。足も長くて、かっこいいが、強そうには見えない。案外、細マッチョなのかもしれない。
「外見ではわからないから、損してるね」
そう言った時、急に目の前に人が飛び出してきた。サングラスをかけ、マスクをした男性二人だ。派手なジャンパーの背中では龍が踊っている。いまどき、こんな人がいるんだ。しかも、この大学に。
「ねえ、カノジョ。今から、どこ行くの?」
セリフまでベタすぎる。
思わず、颯太の方を見た。
「何? 彼氏?」
ヤンキーの一人が颯太に顔を近づける。
颯太がぶんぶんと手を振った。
「単なる同級生です。はい」
ぺこぺこしながら、颯太は去っていく。
「ちょっと」
ボディガードの話はどこに行ったの?
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