きっかけ

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 あっけに取られたようにヤンキー二人も颯太を見送っている。  そこへ大きな男が割り込んできた。 「大丈夫ですか?」  熊さんだ。 「お前が彼氏か?」  ヤンキーが尋ねると、熊さんの耳が赤くなった。 「そんなんじゃありません。単なる同級生です」  そう言いながらも、しっかり、ヤンキーの間に入ってくれている。 「じゃあ、関係ない奴は引っ込んでもらおうか」 「か、関係なくても、変な絡み方はやめてください」 「絡んでなんかいないよねえ」  ヤンキーの一人が顔を近づけてきたので、慌てて、熊さんの後ろに隠れる。 「やめてください」  熊さんが立ちはだかった。よく見ると、手が震えている。  怒りを我慢しているの? 「さっきの男と違って、かっこいいじゃないか」  ヤンキーに言われたとたん、熊さんがその肩をガシッとつかんだ。  暴力反対! 「おい、吉田だな」  そう言って、熊さんは相手のサングラスを取った。  現れたのは普通の顔。 「どういうつもりだ。怖かったじゃないか」  怖かったから震えてたのか。意外だ。 「いや、まあ、その」 「ということは、そっちは大野か」 「バレちゃあ、しょうがないな」  大野と呼ばれた男が芝居がかった言葉でサングラスを外した。大野という人も普通の人だ。  バッと熊さんが私に向かって、頭を下げた。 「すみません、こいつら、俺の友達で。悪ふざけしたみたいで」 「すみません」  吉田さんと大野さんも頭を下げる。 「いえ、あの……。とりあえず、どこか、移動しません? 詳しい話はそれからで」  そこで、三人は初めて、他の人たちが立ち止まって、こちらの様子を伺っていることに気づいたようだった。
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