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大きな地震から2日後。
年が開けてお正月気分も薄れてきた一月半ば、私は仕事の後、高校からの親友の葵に急に呼び出されてカフェで話をしていた。
窓際の二人席で向かい合っていると、ゆっさゆっさと地面が揺れ、カウンターに並んだグラスやカップがカチカチと音を立てる。
思わず手元にあるカップをしっかり持った。
半分ほど残っているカフェラテの表面は揺れているが、こぼれるほどではなく、だんだんと収まった。
「揺れたね。地震?」
「一昨日の余震じゃない? あれは大きかったね。会社のビルが揺れて怖かったよ。」
あの後、電車が止まって困ったと葵が話した。
山間部に小さな土砂崩れが起きたり、お店の瓶が落ちて割れたりという被害はあったようだが、幸いにも大きな人的被害はなかったようだ。
安全であることを確認して、葵の方に向き直った。
「で、そっくりな人を見たって?」
「ええ、見間違いじゃないわよ、絶対に茅野くんだったわよ、柚葉。」
私はカフェラテを持つ手を止めて、しばらく固まっていた。
「嘘でしょ。」
カフェラテに口をつけ、懐疑的な目を向ける。
私の目を見ながら葵は抑えた声で言った。
「だって遺体は見つかってないじゃない?」
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