決意

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「言いたければ言ってください。失礼します。」  ちょうど給湯室の後ろを人が通ったタイミングで、私は野崎さんの横を強引に通り抜けた。  怖い。早く浩輝に連絡したい。でも浩輝は『こちら』の世界のスマホを持っていないようだった。  どうしよう、どうしよう。  昼休み、野崎さんが席を外している間もどきどきする。今この時間に実家に連絡しているかもしれない。  早く、早く定時になってほしい。  定時になり、急いで荷物をまとめオフィスを出る。怖くて野崎さんの方を見ることができない。 「浩輝!」 「うわ、早いね。」 「ちょっとこっちに来て!」  迎えに来ていた浩輝の腕を引っ張ってビルとビルの間の目立たない場所へ行く。 「うーん、そうか。面倒だね。柚葉の実家からアパートまで車で2時間ぐらいだっけ?」 「うん。」 「今日はアパートに戻らない方がいいかもね。」  浩輝が私の腕を取って歩くと、リサさんと呼ばれたあの女性がいた。 「頼みがあるんだけど。」 「なによ、めんどくさいことは嫌よ。」 「聞いてくれないと『ツクヨミ』には帰れなくなるかもな。」
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