決意

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 それからの私たちは、監視役の人たちの協力を得ながら、この世界での日々を愛おしむように過ごした。  懐かしい思い出の大学にそっと忍び込んで広い敷地を歩き回ったり図書館のいつもの机に座ったり。  大学には院生もいるし色んな年代がいるので紛れ込んでいても気づかれない。 「柚葉にはいい思い出ばかりじゃないんだよね。」 「もう忘れた。浩輝と過ごした方が長かったし、やっぱり楽しい思い出の方が多いよ。」  それから、よく行っていたカフェに行ってランチをしてからお気に入りのコーヒー豆と、カフェのロゴ入りの手動のミルとペーパードリップの道具一式を買った。  別の日にはまたあの遊園地に行き、改めて楽しい思い出を作った。  私はこの世界も愛おしい。この風景も匂いも全て愛おしい。  でもそれ以上に横に立つ人が大切で、もう二度と失うことはできないから一緒に生きていく。  浩輝はあんなに強気に宣言したくせに何度も確認してくれる。  でもその度に、この人を守りたいと思う。  出発の日まであと三日。
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