旅立ち

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旅立ち

「ねえ、荷造りってどうしたらいい?」 「引越しじゃないから。」 「服は?」 「うーん、少しなら。」 「これは絶対持って行く。」  私の手にあるのはペアのマグカップだ。  浩輝はにこっと笑って 「割れないように包まないとな。」 と言った。  警察がいないことを確認しながら少しずつアパートを片付ける。  浩輝に「真面目だなあ」と笑われながら、アパートは実家に帰る前提で月末を解約予定としてあったので、掃除をして荷物をまとめて数日後の自然災害の日に備えた。  どちらにしても駆け落ちなので、荷物はそのまま置いて消えることになるけど。  その前に。 「本当に家族に会わなくていいのか?」 「会えるわけないよ。今度こそ外に出られなくなるし駆け落ち前に親に挨拶っていうのも変でしょ。  私がボロボロになっていた頃、責めるばかりで助けてくれなかったし、今回も家に帰らせて知らない人と見合いさせようとするし。  弟もいるしいいでしょ。」 「柚葉、急に開き直ったね。」 「覚悟を決めたら女は強いのよ。それより浩輝は家族には?」 「うーん、もう忘れた。  それより俺は建人と会うの、気が重いー。殴られるかも。」
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