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今から葵と建人くんに会うのだ。
葵にはちゃんと挨拶をしておきたい。
建人くんが大騒ぎするのが目に見えているので、カラオケボックスで会うことにした。
電車に乗り目的地へぶらぶら歩く。こうやってこの街を歩くのも最後かもしれない。
「『あっち』ってどんな音楽が流行ってるの?」
「『こっち』と同じグループとか歌手はもちろんいないけど、似たような感じ。いろんなジャンルがあるよ。」
「カラオケボックスある?」
「あったかなあ。なかったような気がする。」
「やったら儲かる?」
「かもね。考えたことなかった。」
「キーボード持って行こうかな。私、絶対音感あるんだよ。」
幼稚園から中学までピアノをしていたので、簡単な採譜はできる。
「キーボード? でかいよ。」
「昨日、リサさんめっちゃ買い物してたよ。」
前日の土曜日、『あちら』に持っていきたいものを買いに行っていると、浩輝を監視しているはずのリサさんが両手にいっぱい高級ブランドの袋を下げていた。
監視はどうした。
「ああいうのはいいの?」
「さあねえ。もうすぐ任務完了だから買いあさっているんだろうね。
『こっち』の方が物価が安いし。」
『ツクヨミ』と『アマテラス』の文化の違いがよくわからない。
カラオケボックスはなくてファッションは似たようなものなのか。
「柚葉、絶対音感あるんだ。知らなかった。惚れ直すなー。」
笑いながら手を繋いでカラオケボックスに入る。
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