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「ひ、ひ、浩輝?」
建人くんがひきつっている。
「葵、建人くんに言ってないの?」
「言ったわよ、でも信じてなかったのよ。」
「クローン?」
建人くんが震えながら浩輝を指差し私に聞く。代わりに葵が怒る。
「ちょっと建人、気持ち悪いこと言わないでよ。本物よ。」
実際、パラレルとか言ったら気持ち悪いかもしれない、と思わず笑ってしまう。
「建人、長い間連絡しなくてごめん。
あと、結婚おめでとう。」
「浩輝〜!」
建人くんが浩輝に思い切り抱きついた。
「お前、変わってないなぁ、声もそのまんま!
俺、お前の葬式に行ったんだぞぉ。」
やっぱりカラオケボックスにして正解だったと葵と二人で頷いた。
最初の葵と同じように建人くんは浩輝に質問を浴びせたが、のらりくらりとかわしていた。
その間、私たちは歌って喋って食べて飲んで、たまに泣いた。
そして写真をたくさん撮った。
あれ、『あっち』ではスマホってどうなんだろう?
現像しておいた方がいいかな。
そういや、浩輝はスマホ持ってなかったな。
「柚葉、元気でね。」
「葵、ごめんね、結婚式出られなくて。」
「ほんとよ、一番出てほしかったんだから。」
二人でわんわん泣く。
困った顔の建人くんと申し訳なさそうな顔の浩輝。
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