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今までは、仕事から疲れて帰って寝るだけだった。食事はいつもカップラーメンかコンビニだった。だけど、遠山さんはいつも「おかえりなさい」と出迎えてくれて、おいしい食事を作ってくれて一緒に食べる。その「非日常」が、今は「日常」へと変わっていたんだ。
「寂しい、ですか……。嬉しいことを言ってくれますね」
遠山さんはそう言った後、顔を近付けて来る。反射的に目を閉じると、唇にふわりと温かいものが触れた。
「美波さん、あなたの人生を私が奪ってもよろしいですか?」
そう言われ、私は迷わず彼に抱き付く。私の日常にはもう、遠山さんがいないとダメだから……。
七年後ーーー。
日本では、行方不明になった人は七年経つと死亡扱いされるらしい。
「今日で七年ですね。これであなたは私の隣以外、居場所がなくなった」
山奥にあるとある洋館にて、ソファに腰掛けていた私の隣に彼が座り、私を抱き寄せる。私は微笑み、陽介さんの頬に触れた。
「私の居場所は、あの日出会った瞬間からあなたの隣ですよ。……それより、今日の夕食は何ですか?」
「あなたの体を考えて、トマトとアボカドのナムルとキャベツとベーコンのミルクスープパスタにしました」
陽介さんがそう言った後、どちらからともなく唇が重なる。軽く互いの唇が触れ合った後、陽介さんは幸せそうに微笑みながら、私の大きくなり始めたお腹に触れた。
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