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「遠山さん、今日のご飯は何ですか?」
「あなたが好きだと言っていたロールキャベツですよ」
私の鞄を置き、上着をハンガーにかけた遠山さんは、味噌汁を温め直すためにキッチンに立った。その姿をチラリと見た後、私は明日の天気を確認するためにテレビをつける。
テレビをつけると、ちょうど九時前のニュースが報道されるところだった。このニュースの最後に天気予報がある。間に合ってよかった。
来月にアメリカの大統領が日本を訪問するという話や、少子高齢化問題の話、ジェンダーや関東地方で起きた交通事故の話が流れた後、ニュースキャスターが真面目な顔で次のニュースを読み上げる。
「ーーーさて、「明治館殺人事件」や「桜庭村殺人事件」など数々の事件を起こし、指名手配中の遠山陽介容疑者は、現在も警察の捜査が行われているものの、未だに逃走中です」
ニュースキャスターがそう言った後、その逃走中の容疑者の顔が画面に映し出される。そこに映っているのはーーー。
「マヌケなおわまりさんたちは、今日も私を頑張って探してくれていたみたいですね」
遠山さんはそう言いながら、お茶碗などをテーブルの上に並べていく。その目は、まるで氷のようにどこか冷たく感じ、ゾッとしてしまう。
私の家に住んでいる遠山陽介さんは、全国指名手配中の殺人犯である。
全ての始まりは、三ヶ月前のこと。残業を終えて帰宅したのはもう十二時近かった。フラつく体を何とか動かし、明日……いや、もう今日だけど、休みであることに感謝しつつ、スーツを脱いで適当な部屋着を着てベッドに潜り込んだ。その時までは、私の何の刺激もない日常のワンシーンだった。
「ーーー起きてください、もうお昼ですよ」
体を揺さぶられ、目を覚ます。私は一人暮らしだ。仕事が忙しいため、休日に起こしに来るような彼氏はいない。誰だろう、と目を開けると目の前に遠山さんがいた。
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