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ごく普通のOLとして一人で生きてきた私、鳴川美波の運命が大きく変わってしまったのは、三ヶ月前のある春のことだった。
午後八時半、最寄り駅に到着する。疲れて座席に座りながら寝てしまっていたらしい。ボウッとして、まだ眠いと訴える体を無理やり動かして電車から降りる。
「疲れた……」
駅を出てアパートへと歩く。アパートは駅から五分もかからないところにあるため、あと少しと自分の言い聞かせて歩く。まあ、駅から近い+家賃が安いことを重要に借りたアパートは築年数がそこそこあって、セキュリティーなんてないんだけど。
四階建ての古いアパートにはエレベーターなんてものがあるはずがなく、疲れた体に鞭打って一段ずつ階段を登っていく。二階の角にあるのが私の住んでいる部屋だ。
一人暮らしをしているはずの部屋の電気は付いている。消し忘れたとか、怪奇現象とか、そういったものではない。というより、怪奇現象の方が百倍マシな気がする。
鍵を差し込まなくても、ドアは何の抵抗もなく開いていく。そして、私が玄関の中に入ると、リビングに続くドアが開き、ヒヨコ柄の可愛らしいエプロンを着た男性が「おかえりなさい、今日も遅かったですね」と言いながら出迎えて来る。まるで同棲している彼氏みたいに……。
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