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つまり、足音もペットボトルの柔らかい素材で叩く音も、丸聞こえになる程、床は薄いということだ。だから、いくら台風だったと言えど、下に響く音が何かしらあったのではないか。それを三井は考えたのだろう。そして僕も今思った。
しかし、川田は首を振る。
「……ごめん。みのりんは、一時くらいにはもう寝入ってたし、私はそれからいつもみたくイヤホンつけて、そのまま寝ちゃったから……特に役立つことは、言えないかも」
「そうすか……でも、それで犯行は一時以降七時近くまでなのは分かりましたね。俺は七時にいつも起きるんですけど、ちょうどトイレで松君とバッタリ会ったんです、ね?」
松君は僕のニックネーム。松枝燐の松から来ている。
「そうですね。あ、でも僕は六時に目が覚めてクロスワードやってたんで、六時まで……となるかもしれないです。何か変な音したら、僕の部屋は突き当たり、加藤さんの隣ですし」
ただ、殺害時刻が分かったとて、密室トリックは破れない。ここはやはり、名探偵の血を引く城咲の言葉を待つ他ないのだろうか。
すると荻原が言った。
「あの、みんなで……無実だってこと証明するためにも、怪しい物がないか、部屋を順番に調べてみるとかは、どうですか……」
川田はそれに同調した。
「そうだね……疑うわけじゃないけど、安堵できる環境を少しでも作れるなら……」
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