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他も同意色たる顔で立ち上がろうとする中、何故か城咲は不意に耳打ちをしてきた。私に合わせて、と。それが何のことなのかを考える暇は無かった。とうとう彼女の口が開かれたからだ。
「待って。その必要は無いわ。もう下手な芝居は、止めにしましょう田嶋さん」
城咲に全員の視線が集まった。
「燐、その足元にいる蜘蛛、拾って田嶋さんのもとへやってくれる?」
普通なら、え……? の一言でもこぼすのだろうが、僕は彼女の言う通りにすぐ動いた。彼女の頼みは、必ず意味のある結果を生むと分かっているからだ。これまでのように。
「あぁ……これ、結構珍しいから後でちゃんと袋か何かに入れて持って帰ろうと思ってたんだけど。それなら仕方ないね」
そして掴み上げるそぶりをして、寝ている田嶋に近づくと――
「ちょ、ちょっと待っ……!!」
僕の手は田嶋の顔の近くで止まり、両手を突き上げて上体を起こした彼女は、喫驚として固まった。
そこで城咲は吐き捨てるように言う。
「嘘よ。燐は、蜘蛛なんて掴んで無いわ」
そこで僕は手のひらを返し、何も無いことを見せると、城咲は続ける。
「どう、驚いた?」
「え……うそ、騙されたの、私。なんで……?」
「騙されたのは私たちの方なのに、随分と不思議なこと言うのね。あなたはなぜ、気を失ったフリをしていたの?」
「それは……ええっと、違くて! そう、ちょうどいま――」
「嘘はいいわ。そのスカートで何を隠しているのか言ってくれればそれだけで済む話よ」
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