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放課後、僕は図書室で本を読んでいる。
しかしページは一向に進まず、内容は頭に入って来ない。
理由は単純明快、傍らのバッグに入っている1通の手紙のせいだ。
朝、僕の下駄箱に入れられていた空模様の可愛い封筒。クラスメイトに見つからないようにこっそり読んだその手紙は、疑う余地のないラブレターそのものだった。
そのせいで今日は調子が狂いっぱなしで大変だった。いつもは寝て過ごす数学の授業も、楽しみにしている体育も、昼休みの友達との会話も、何をしてても意識がそっちに向いてうわの空だった。
ようやく迎えた放課後。時間潰しに図書室に来たは良いけど何も手につかないままだ。
進まない本を閉じ、さりげなく周りを確認して封筒を取り出す。中には封筒とお揃いの青空に白雲があしらわれ、ふたつに折られた便箋が入っている。
そっと便箋を開くと、ボールペンで手書きされた文字が並んでいる。
『有野 友樹 様』
1行目は宛名。間違いなく僕の名前だ。
『だいすきです。
まえからずっと憧れていま
した。
てれちゃいますけど、
ご迷惑かもですけど、
面と向かって伝えたいです。
笑わないで下さいね。』
もう一度読み直してみて、思わず顔が緩む。たぶん今、すごくニヤニヤしちゃってる。
口元を引き締めて続きに目を通す。
本文の後には、付け足したように待ち合わせの時間と場所が書いてある。
『今日の4時、屋上で。』
いつもなら部活で行けない時間。でも、今日はたまたまコーチの都合で休みだ。…それを知って送ってくれたんだとしたらちょっと怖い気もするけど、それだけ僕の事を考えてくれていることの裏返しとも言える。
最後までしっかり確認して、便箋をそっと折り畳んで、封筒に戻す。
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