ラブレター

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1つ気になるのは、差出人のこと。 封筒の表にも裏にも、中の便箋にも名前がない。緊張しすぎて忘れたんだろうか?僕はラブレターなんて書いたことが無いからその緊張感は想像するしかないけれど。 (今日1日ボンヤリしてる姿を見られてたら幻滅されちゃうかもなぁ…) そんなことを思い、まだ見ぬ差出人に思いを馳せる。 クラスの人だろうか? 他のクラスの同級生? あるいは後輩や先輩の可能性もある。 手がかりが全くないのがもどかしい。 とりあえず封筒をバッグに戻して壁の時計を見る。まだ3時半を過ぎた辺りか…。 昼間より余計に時間の進みが遅い気がする。そういえば、こういう時は何分前に行くものなんだろう? よくネットで見かけるのは「男性ならデートには15分以上前に」とか「相手を待たせるのはマナー違反!」とかだけれど、この場合は相手より早く行ってしまったら気まずいんじゃないんだろうか? 図書室に居ながら本も読まずにダラダラしているのも変だ。僕はバッグを持って立ち上がり、本を元の場所に戻すと図書室を出た。 4時まであと15分。 「遅れるよりマシか。」 あえて口に出して覚悟を決める。心臓が高鳴って緊張が込み上げる。僕でさえこんな調子だ。手紙の主の方はよっぽど緊張しているに違いないな。 心持ちゆっくり歩いて早く着きすぎないように調整する。 僕が屋上へ続く階段の前に来たのは約束の10分前だった。割とちょうど良いのではなかろうか。 (もう、来てるかな?) 階段を昇る。 屋上の扉のノブを回す。 開けると同時に外から風が吹き込んでくる。 それを押し退けるように屋上に踏み出す。 遮るもののないコンクリートの空間。
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