ラブレター

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……誰もいない。 「まだ来てないのかな?」 改めて見回してもあるのはフェンスだけ。 「どこで待つのが正解なんだ…っ!」 僕は頭を抱える。かといって入り直すことも時間的には難しい。このまま入口を見つめているしかない。 あぁ、心臓の音が頭にまで響くようだ。 口も乾いてきた。スマートに受け答えできるだろうか…不安も込み上げてきてしまう。 ここに来てから何分経った? 5分はまだなのか? ガチャ… ドアノブが小さく鳴った。 ついに差出人とご対面…! 現れたのは、意外な人物だった。 「「え?お前が?」」 声が重なる。 声の主はクラスメイトで同じ部に所属する 高橋悟。もちろん男…。 「こ、こんな所になんでお前が?」 悟が上ずった声で聞いてくる。 「悟こそなんでここに来たんだよ!?」 こちらも尋ね返す。どうやら手紙の差出人では無いようだけど、それならここにいられるのは困る。 「…俺もちょっと、な。ここで待ち合わせなんだよ。」 「……悟も?」 「も?…え、お前もかよ?」 2人、顔を見合わせる。なんでだろうか、スゴく嫌な予感がする。 「なぁ、もしかして…。」 悟が言う。 「うん、もしかして……。」 僕も言う。 そして僕はバッグから、悟はポケットから全く同じ見た目の封筒を取り出す。 「「うわぁぁぁ!騙されたっ!!」」 そして2人同時に膝から崩れ落ちる。 「朝から超ドキドキしてたのにっ!」 「俺だって!ワクワクが止まんなかったよっ!」 拳で地面を叩きながら2人喚く。 あぁなんて手の込んだイタズラだ! 犯人は恐らく部活仲間の誰かだろうけど、モテない男子の純情を何だと思ってるんだ! 「はぁ、やられたなぁ。」 やや落ち着きを取り戻した悟が力無く言う。 「これはヒドイね~。」 はぁ、と一緒に溜め息を吐いて立ち上がる。 そろそろ日も暮れる。 僕たちは帰宅するべく揃って校舎に戻った。
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