1,勇者との出会い

7/9
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「――月に照らされ映る影、それが今宵最後の命だ」 「その声……ネモネア、なのか」  砂漠に朽ち果てた遺跡の柱の上に座る禍々しい力を得たあたいの姿に驚きと恐怖の顔が3人。どうやら仲間が出来たようだ。 「ふふっ、ひさしぶりだね勇者アヴエロ」 「その姿は……どうしたんですか、まさか魔王の力でっ」 「そうさ、お前に屈辱を味合わせられたあと、苦痛に耐えて魔王様に力をあたえられたんだ!」 「苦痛に耐えてだって……君は。ネモネア、癒しの森で戦ったときも言いましたよね“間違っている”と」 「間違いだと? お前にあたいの何が分かってるって言うんだっ!」  見透かしたような勇者の眼にあたいの身体から屈辱と怒りの紫炎が包む。 「ネモネアッ」 「……うるさいんだよっ、あたいは世界を変える魔王ルモールの配下、んであんたは世界を護る勇者っ、それだけだろうがっ!」 「違うっ、君はっ!」 「あたいは魔王様の配下ネモネアだっ、屈辱を味合わされた恨み、魔王様の邪魔をする勇者とその仲間達を殺す者っ!」  柱からフワッと浮く、雑念を捨てあたいの頭の中を勇者を片付けることだけに集中、全力で潰す。 「ヴェノム・サンダーァァァッ!」  魔王様の力で覚えた毒の雷魔法。片手から放たれる不気味な雷が3人を上から襲いかかる。  空に浮かんでいれば勇者達の動きはまる見え、魔法を紙一重で避けているがそれも時間の問題。  これだ、これこそが魔王様の力。あたいは弱い故に捨てられ地獄を味わった。でもそれは弱いのが悪い、今はもう逆らうものは誰でも殺れる強者なんだ。 「アハハハハッ、逃げろにげろっ、力のあるものがこの世を支配するんだぁーっ!」 「毒の雷か、うわぁっ!」  魔法を避けきれずに壁に激突する勇者、これで厄介者ともお別れと容赦なく撃つ。  だが勇者は咄嗟に雷の魔法を繰り出してあたいの魔法を相殺。 「ハァ……ハァ、相殺できた……」 「やるじゃないか、なら5発同時ならどうだぁぁーっ!」  勇者1人に対しあたいが出せる最大数のヴェノム・サンダーを放つ。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!