1,勇者との出会い

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 終わりだと思った。  いや終わりだと思いこんでいただけで、毒煙の先に勇者は立ってあたいを見上げている。 「どういうことだ……」 「あなたの毒の雷に私の雷を混ぜて、同じ属性の雷を浴びた仲間の杖に避雷針になってもらいました……“ウイング”!」  翼の魔法で空中に羽ばたく。あたいが勇者ばかりに気がいきすぎたせいだ。 「ちいっ、ヴェノム・サンダーッ!」 「無駄です!」  やはり混ぜ合わさった雷は杖に向かってしまう。 「避雷針……どうやらあたいのこの新たな魔爪で殺されたいらしいな」  魔王様の翼と紫色で不気味に強化された魔爪で勇者に仕掛けた。勇者も剣で払い続けていく。 「また防戦、なめやがってっ」  しかしあたいが攻めてもせめても避けられる。剣の腕も手慣れていて次第に焦っていく。勇者には動きがわかってきたのか笑みがこぼれる。 「くっ、どうして」 「……君は、空中の戦いになれていないからです」  勇者には気づかれていたようだ。でも、 「なぜ、あたいにわざわざそんなことを……まさかまた説得でもしようってんじゃ……」 「泣いていたんじゃないですか?」 「なに……」 「親に捨てられた時の幼い君は、泣いていたはずです」 「また話……」  『――お父ちゃんお母ちゃんっ、あたい何でも言うこときくからここからだしてよぉぉ――』 「孤独、だったでしょう……」 「ううぅっ……ハァハァ……なんだ」  頭を抱えながら、よぎったあれはあのとき両親に、魔性の森に捨てられたあたい。いつの間にか大量に汗もかきだした。 「ネモネア」 「よるなっ……何でお前は……おまえはぁぁぁーっ!」  心を狂わせる存在、勇者。奴の言葉におかしくなるあたいは激高して、言葉を忘れたくてなりふり構わず突撃した。
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