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ドサッ、と地面に落ちたのは翼を切られたあたい。
「そ、んな……また」
「頭によぎらせて苦しませてしまって、すまない」
言葉は耳に聞こえていたが、あたいは自分に呆れていた。魔法は攻略され、空中の慣れなさを見極められ、最後には我を失い敵に情けをかけられている。
「でもねネモネア、苦しいってことはそれは君が本当は両親の愛情がほしかったってことなんだよ」
「……あい、じょう」
「君は両親を愛していたんだ」
あい……。
「くっ……次で最後……あたいの全てを掛けて勇者を倒す……」
「ネモネア、どうして……」
あたいはその場から消えた。やっぱり変だ、勇者の話を聞くと自分自身がおかしくなる。それにどうしてあたいにそんな……。
だがそれもこれも魔王様が2度目の失敗許してくださるかどうかだ。
「魔王……さま……」
黒い衣の魔王様はいつもより不気味で恐く、大きな水晶を見ても振り向いてはくれない。しばらく膝を付き頭を下げた。
「……ネモネアよ」
「は、はい」
「また、勇者に負けたようじゃな……」
「はい……もうしわけ、ありません……」
「あの時、魔性の森で魔獣達が大人しいのに気が付き、原因を探ってみればネモネアよ、お前が現れた」
魔性の森で初めて魔王様を見かけてあたいは襲いかかったがあっさりやられた。殺されるかと思ったが『お前の力がほしい』とあたいにスカウトしてきて、のった。
「あの時のお前はまさに野獣そのもの、ぜひ我が部下にとスカウトした……だが今のお前はなぜか野獣性が失せているようにみえる。勇者に何をされた?」
頭も上がらない、不甲斐ない自分。
「それは、わかりません……魔王様……その……“あい”……っとはなんですか?」
「あい……“愛”か……」
「小さな頃両親に捨てられたあたいは、ただ生き残るためだけに殺して食べて、また殺しては食べて、そうして魔性の森で生きてきました。だから、“あい”と言うものがよく、わからなくて……」
「愛、か……それは――」
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