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「色々と心配かけたね」
ラースの言葉に、カノンは首を横に振る。
『ご無事でよかったです』
カノンの言葉を見て、いつものように綺麗に微笑むラース。
―――あれから、治療薬投与の甲斐あってラースは回復を遂げた。
数日は大事をとって安静にしていたけれど、今はすっかり顔色も良くなっている。
「ねえカノン、今回は本当にありがとう」
『そんな、私は何もできていないです』
「あんな状態の俺のそばにいてくれようとした。
それだけで気持ちが救われたんだ」
ラースはじっとカノンの顔を見て、少し眉を下げた。
「頬に傷が残ってる。
……ごめんね」
ラースの翼が掠めてできた切り傷は、王族御用達のよく効く薬を塗って貰えたおかげで、大した傷跡にはならなかった。
けれど頬にはまだ赤み残る傷があり、ラースはそれを気にしているようだった。
『大丈夫です。すぐに治ります。
それに少しくらい傷が残ろうと誰も気にしません』
それを見て、ラースはまた困ったように笑う。
「ダメだよ、女の子の顔に傷が残るなんて。
それにアイツが気にしないなんて有り得ないから」
(……アイツ?)
「まあ、アイツなら例えキミに消えない傷ができようと、丸ごと受け止めるだろうけど」
要点の掴めないラースの言葉に、カノンは首を傾げる。
そんなカノンを見て、ラースはどこか意味深に笑うのだった。
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