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私の唇の表面を真の唇がむにゅっ、むにゅっと動いて先へ導こうとすると
コンコンコン…
「…誰だろ…こんな夕方に…残念」
チュッ…真は一度離した唇をもう一度重ねてから立ち上がり、ドアへ数歩進んでから
「はい」
ノックに応えた。はぁ…集中が切れたから片付けようかしら。ドアの開く気配を後頭部で感じながら、何となくブラウスのリボンを整える。
「真、遅いと思ったら姫美華だね。Hi!」
ちょっと面倒に感じながらも応えないのはどうかと思い、その少しハスキーな声に振り向くと
「久しぶりね、真」
ハスキーな声の主、川俣ネオとは違う知らない女性が真の腕にポンと触れた。誰?
「今日じゃなかったよね、ミサキ?」
「明日からだけど、今日は知っている方へ先にご挨拶にね。おじさまと話し込んじゃって、真のところへは遅くなっちゃった」
「そう。明日からよろしく」
「ええ、楽しみにしていたの。こちらこそ、よろしくね」
川俣ネオの名前には、音生と書いてネオと読む漢字があるのだが、母親がスウェーデン人の彼の容姿から私はネオというイメージしか持てない。真といとこのネオはこの学園の事務局長だ。
「今から何人かで食事なんだけど、真も一緒に来てくれるかしら?」
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