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「失礼します…あ…今日も武井先生はご不在ですか?」
「そうなんだ。申し訳ないけど、俺でいいかな?」
「はい、それは…はい。先週もとても参考になったので。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしく。掛けて」
「はい、失礼します」
ゼミの武井先生は、夏休みまで毎週1回、私達に個々の相談の時間を設けて下さっている。
私は金曜日の15時からと決まっているのだけれど、先週は急用の武井先生に変わって城田先生が対応して下さった。そして今週も城田先生だ。
「もしかして、金曜日のこの時間は武井先生のご都合がつきにくくなってますか?変更してもいいとメール入れておこうかな?」
パソコンを出して準備をしながらそう言うと
「逆に、星乃さんが良ければ、俺が最後まで担当します。去年と今年の2年契約での特任を延長もしないし、一人くらい卒論の担当をしたいということは武井教授にも伝えていたんで」
ベージュのサマーニットを大人っぽく着こなした城田先生が、ポットの前から私を見つめる。見るのではなく、見つめるという視線の意図を探ろうとして…結局見つめ合うことに。
「ぇっと…もうこの時期に延長はされないと決めておられるのですか?去年の城田先生の講義はすごく良かったのに…もったいない気がします。あ…偉そうにすみません」
「かまわない。嬉しい言葉だけれど、もう決めている。星乃さんのような熱心な学生に出会えたことは本当に良かったと思うけどね」
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