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父はデスクに両肘をついて手を組むと、軽く顎を乗せて
「大学の特任助教授までご存知だとは…どうすればそんなことが?」
と三咲を見る。三咲が中学だけでなく、学園中に数人の同級生がいるので全校の教員名簿を見たと答えたところで
「親密と言うには何か理由が?」
父が再び彼女に聞いた。
「先週見たんです。城田先生と婚約者さんが5時半頃、二人で廊下を歩いているところを。講義の時間でもなく不自然だと思って見ていると、校舎の出入口で立ち止まって長い間話し込んでいるようで…わざわざ学生の見送りもおかしいですからね、とても親密そうでした」
「そうでしたか。では、井上さんは戻って下さい。くれぐれも真は婚約者のいる身だと…よろしいですね?」
父はそう言って彼女を部屋から出すと
「城田先生のことは?」
と僕に確かめる。前もって美華から話があるくらい問題のないことだと伝えると、さらに確かめられた。
「姫美華さんに申し訳ないことになったが…真の気持ちはどうなんだ?ここは正直に頼むよ」
「はい、美華は最初に惹かれた時のまま魅力的です。結婚は揺るぎない…なのに以前付き合っていた井上三咲に…魔が差した」
「まったく…姫美華さんと結婚するのだね?」
「はい」
「それなら行動は自ずと見えてくるはず。星乃さんにも申し訳ないがこのまま黙って軌道修正しなさい」
そう決めたのだが、事態は意図せぬ方向へ動いてしまう。
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