化けの皮

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化けの皮

週末は両親も私も家から出ることなく、いろいろと話をしながら過ごした。兄も含め3人は私に、何度も言葉を変えながら真との結婚の意思を確かめる。 「しないわ」 「いらない」 何度聞かれてもそのふたつしか答えはない。この期間に彼と体を重ねることがなくて良かったと思いながら、もうキスさえ嫌だもの…とため息が出る。 「川俣さんは、婚約を白紙にと言われたが、婚約解消と言いたいわけだよ。お互いの合意のもとで結婚という約束を白紙に戻すのが婚約解消。挨拶にとおっしゃったのも合意の前提があるのだと思う。でも実際には一方的な婚約破棄だね」 週末だというのに誰もお酒を飲まずにお茶と珈琲を飲む夜、父が私達を順に見た。 「姫美華のことを言いつつ、慰謝料ではなく挨拶にとおっしゃったのは、もしかすると川俣さんは真くんの行為をご存知じゃないかと思うんだ」 「そう言われると…そうね。姫美華のことはこじつけかしら?」 「そんな気がする。姫美華の潔白は明らかで、あちらに重大な非があるのだから慰謝料請求をする」 「当然だよ、父さん。金銭の問題ではないけれど、姫美華と星乃の正当性ははっきりと主張したいからね」 「そうだね。姫美華、代理人を立てるから真くんと直接の連絡はいけないよ?いいね?」 それはいいわ。婚約に関してはもう仕方ないでしょ?でも、それ以外に気になることは自分ではっきりさせるわ。
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