現状

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真がこの学園の令息だとは皆が承知しているので、私は予期せぬ援軍を得たようだったが 「久しぶりですけど、あとにしてもらえますか?私は今、友人を悪く言われたままで相手に勝手に泣かれていて、友人への謝罪待ちなの」 別に誰かに応援してもらおうとは思っていない。学園の息子だろうが関係ない。今の私の優先順位は揺るがないわ。里穂に謝りなさい。 真は何も言わずに私と花田レナの間に立っていた。それに促されたのか 「…邪魔してごめんなさい」 小さな声で花田レナが言った。 「ああ…そんなことはかまわないのよ、花田サン」 「っ…」 そんな‘ごめんなさい’で誤魔化されないわ。里穂に謝りなさい。 「…里穂さん…ごめんなさい」 そう言った彼女と取り巻きは退散した。こんなことは初めてではなかったけれど、このあとから真に何度か誘われて交際が始まったのだ。 これは女子生徒の妬みを呼び大学にまで私が‘悪女’という声は広がるが、大学生の真は堂々と私を車に乗せて送ってくれたし、大学卒業後、副理事長になってからはこの副理事長室に私を出入りさせてくれる。もちろん家族公認の交際で、私が20歳の時に婚約した。そして今… 「真…明らかに邪魔してるよね?」 「美華からキスしてくれたら手を退けて待つよ」 またクスッと笑う真に誘われるように、キーボードに手を置いたまま、チュッっと顔を寄せて彼の唇の端へとキスすると 「今のはノーカウントだよね?」 彼がゆっくりと私の唇を塞いだ。
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