1

2/12
前へ
/544ページ
次へ
 ガルフ連邦の最西端、マルドゥース諸島からなるここマルドゥース州は、第二次国際戦争で敗戦したときにアノルカ合衆国に占領され、ガルフ連邦の領土であるとされながら、事実上アノルカ合衆国の支配を受けてきた。  ガルフ本土なら当たり前の右ハンドル左車線ではなく、アノルカ合衆国と同じ左ハンドル右車線。通貨もガルフのリムではなく、アノルカ合衆国のジル。そんな時代が終戦を迎えた一九四二年から本土復帰がなされた一九七五年までずっと続いたのだ。  しかし、その華々しい返還も『政府の高すぎる買い物』と揶揄(やゆ)されていた。  アノルカ合衆国大統領リカード・ニーソンは、繊維製品の輸出自主規制という交換条件と共にマルドゥース州をガルフに返還したが、州内に置かれたアノルカ軍駐屯基地はそのままになった。  そのうえ、一九七四年に結ばれたマルドゥース返還協定の第七条に従い、ガルフ連邦政府は『特別支出金』という名目で総額三億二千万ジル、ガルフリムにして約十一億リムの大金を支払っていたからだ。
/544ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加