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そう叫ぶと同時にテレビを放り投げていた。三本の信号入力コードと電源コードが引き千切れる音がし、テレビがフローリングに当たる鈍い破壊音がそれに続く。何も知らない人間達の戯言は既に消え去っていた。
中腰になったまま肩で息をした。
なんなんだ。なんなんだ、この国の連中は。頭の中はそれだけだった。
自分達の平穏な日常がどれほど尊い犠牲の上に成り立っているのか。そんなことさえ考えもせず、自分に与えられる権利のありがたみを省みもせず、快適で当然といわんばかりに日々を謳歌している。
「俺は、俺は、こんな連中を、守るために」
その先の言葉は出なかった。
自分やヒューゴはこんな自分のことしか考えないような連中の日常を守るために命を懸けたのか、エルヴィスやウィンディはこんな屑みたいな人間どものために犠牲になったというのか。
ただひたすらに虚しかった。
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