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 自分は既に二度、死んでいた。一度目はウィンディを止めるため自分のこめかみに銃口をあてがったとき。二度目は、あの番組を見てこの社会の無責任さを骨の髄まで理解したときだ。一つ目の出来事は自分に生きる意志を捨てさせ、二つ目の出来事は自分の心を殺した。その意味で、レオン・ウェルズはもう完全に死んでいたのだ。  そんなことを思い描いている最中も課長から一度も視線を外さなかった。 「分かった、本当にいいんだな?」  課長は最終確認のように自分に尋ねてきた。 「はい、お願いします」  一切の躊躇(ちゅうちょ)なく言い放った。 「分かった。公安部長には私から話を通しておく。それまでは自宅待機としてくれ」 「承知いたしました」  きびきびとした動きで頭を下げ、その場を後にした。  十四階の廊下は普段と何も変わらなかった。黒いネームプレートがそれぞれのドアの上で突き出ており、天井には二本一組の蛍光灯が煌々(こうこう)と輝いている。課長の指示通り、自宅に戻るためにエレベーターホールに足を向けた。
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