子供達と一緒に

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子供達と一緒に

 息子二人が小さいときには下の子が1歳半を過ぎてよちよち歩けるようになったころからディズニーランドに毎年行った。  次男が3歳になる頃からは毎年クリスマスシーズンを狙って行き、大抵の人がいらないよ。と思うような家族写真をツリーの下で撮っていかにも仲良し家族を演じた。そう、もう、その頃から夫には演じていた家族だった。  そもそも夫は良い家族を演じるために、この年賀状用の写真を撮るために毎年クリスマスシーズンにディズニーに来るのだから。  子供の機嫌がよい一番最初にツリーの前に写真を撮ってしまうと、夫は既に帰りたくなっているのだ。  でも、子供たちは興奮しているし、私も、年に一度、この時しか休日に家族で出かけることもないのでしっかりと朝食からキャラクターがおはようを言いに来てくれるレストランを予約し、子供は楽しさマックスになる。  夕食も落ち着いて座れるレストランを予約する。お昼だけは乗り物の込み具合で食べる時間を適当にとって、子供の空腹を紛らわせる。    その後も、その日ばかりはどんなに夫が嫌な顔をしても、 「何しに来たの?写真撮るだけだったらもう帰る?」  一日に何度このセリフを言わなければいけないのか。その度に息子たちは不安そうな悲しそうな顔をして夫を見る。    夫にしても決して安くはない入場券を買って入っているので、夜の花火を見るまでは帰れないとは思っている。ただ、並んだりするのがとても苦手なのだ。子供は案外並ぶのには慣れていて、自分用のリュックサックにしっかりとゲームを入れてきていて、並んでいる間はゲームをして時間を潰していた。  私は紙の本を持って行っていたので、それを読みながら過ごしていた。夫は趣味がないので一人でボーっと立っているので辛いのだ。  だからと言って、私とは会話が続かない人だった。私や子供に興味がないので共通の会話がないのだ。なので一緒に話して時間を潰すこともできない。  でも、年賀状の為にだけでも子供たちが毎年ディズニーに行かれたのは良かったと思っている。彼らなりに楽しい思い出にはなっているだろう。    上の子が小学校5年生のクリスマスに、突然、その行事は中止になった。    後からいろいろすり合わせると、夫がその頃浮気をしていた相手がディズニーのホテルの従業員で夫の元教え子だった。  子供と言った最後のディズニーランドは夫がその浮気相手に見栄を張りたくてそのホテルに泊まると言ってしまった様子だった。あろうことかスイートだ。そこのスイートに泊まれた翌年からなくなったのだった。  その時は次男が小学校低学年だったが、おねしょをしてしまい、ホテルにはご迷惑をおかけした。普段そんなことはないのだが、疲れすぎたのと、夕ご飯も朝ごはんも付いていなかったので、買ってきたジュースを沢山飲み過ぎたのだろう。    通常はスイートだったら夕食も、朝食も付いているのにそれは夫が省いてしまったらしく、そのお世話をしてくれた浮気相手がパンを差し入れてくれた。我が家の息子たちの一人分くらいの量だったが。  息子二人と私はパンと夫を見て、 「夕ご飯もついてなくて、モーニングは食べられなくて、これが朝ごはん?もうちょっと何か買いに行くかモーニングお願いしてみたら?」  夫も流石にそのパンの量では足りないというのは分かったのだろう。早々にホテルを出て、家に帰る途中でファミレスに寄った。     普通はホテルに泊まるのは翌日もランドかシーに行くのに、それも面白くなかった。  夫は教え子がホテルの部屋をとってくれたという事を私たち家族に自慢したいがために、もしくは出来の悪い妻の私に、これくらい俺の役に立てということを示したいがために、そして、浮気相手に自慢するために、そのホテルに無理やり止めてもらったのだ。  夕ご飯も朝ごはんも付いていないのにも納得がいった。前の夫は変な所にケチなのだ。せっかくホテルに泊まるのだからそこはケチらなければ、楽しい思い出になったのに。  毎年は子供が電車の中で爆睡しても決してホテルには泊まらなかったのでホテルに泊まれたのは嬉しかったのだが、気まずさが残った。  その翌年からは、ホテルどころかディズニーランドにも連れて行ってもらえなくなった。  年賀状の写真も普通のデザインのものに変わった。  まぁ、子供達も男の子だったし、親と行っても楽しくない時期になっていたのかもしれない。  豪華なホテルに泊まったその年で、子供と行ったディズニーランドは最後になった。
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