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「そうですねぇ」
あなたは瞑想するように瞼を閉じた。
「……難しい質問です」
「先生でも、わからないのですか?」
「……この質問の答えは、ヒトが作り上げてきた世界を否定してしまうでしょうから。それに、君にはまだ速いかもしれませんし」
私は先生の横で正座をしていた。
足が痺れてきたが、我慢して先生の横顔を見上げた。
「先生の、ご意見を聞かせてください」
「……例えば、そうですね。桜のお話をしましょう。桜は毎年咲きますね?」
先生の優しい眼差しが私に向けられた。
私はこくこくと頷いた。
「桜の花びらが地面に落ちることで、木の成長を助けることができるんです」
「……なぜ、ですか?」
「桜の花びらや葉が、肥になるからですよ」
「それが、人間とどのように関係するのですか」
先生は、ただ静かに座っていた。
突然降りた沈黙の幕に、私は戸惑った。
これは、自分で考えてみなさいという合図。
私は元気なときの先生の真似をして、腕を組んで唸った。
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