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先生は、樹葬してほしいという希望通り、桜の木の下にいる。
先生が植えた木々より、少し遠い場所。
私の答えに、先生はどう言うだろうか。
一度だけ、桜に問いかけてみた。
もちろん、返事はない。
「……これだから、亡くなった人を思い出してしまう桜は嫌いなんだ」
あの頃の気持ちを、試しに言ってみた。
私の声は、穏やかだった。
「先生。人間っていうのは、とっても強欲なんですよ。なにか前例ができたら、全体に要求する。今は少子高齢化って言ってね、子供よりも高齢者の意見が通りやすくなってて……政治家が掲げる政策、あんまり意味がない気がするんだよなぁ。まぁ、先生ならまず意見を出したことを褒めるんだろうけど」
いろんなことを一通り話し、私は微笑む。
「我々が、どうにかしていい土作らないとね」
風が頬を撫でる。
私はつぶやく。
「じゃあ、また来年」
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