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「空也さんとは親しい友人で、財産なんて知りません。住むところが無くなって困っている私を助けてもらったのです」 「住むところが無い? そんなに貧乏なのか?」  驚いた様子がおかしい。 「何がおかしいんだ?」 「あ、すいません。貧乏じゃないですよ。住んでいたアパートの老朽化で新しく住むところを探していたんです」  一度立ち上がって、コーヒーのお代わりを注いで、自分の分も取ってくる。 「じゃあ、同居は空也から言い出したのか?」 「はい。引越もしてくれました」  仕事から帰ったら全ての荷物が運び込まれて、すぐにでも生活できるように整えられていた。  驚いたけど、迷う余裕がなかったのは幸いなのかもしれない。  空也のあの強引さがあったから今の『同居』が続いているのだから。 『ガチャンッ』  玄関の方から音がした。 「帰って来たみたいですね」  玄関に向かった。
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