17/17
前へ
/606ページ
次へ
「このままここにいるか?」  らしくない空也の言葉。  私の不安が伝染したんだろうか。 「行きます。恋人ではなくても……紹介はして頂けるのでしょう?」  少し、ほんの少しだけ傷つく。  男同士だから。  堂々とは宣言できないから。 「ああ」  優しい口づけを額に落として、大きな優しい手が撫でた。  その手が時計をはめた腕を取って、時計に口づけた。  まるで儀式のようなその姿に胸が高鳴る。  お互いスーツで。まるで結婚式のような錯覚に陥る。 「空也……」  空也の腕を取って、同じように時計に口づける。 「お前は信じて、俺の側にいろ」 「はい」  微笑んで頷いた。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加