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「空也が末っ子なんて信じられないですね」
「何でだ?」
「何となくです。空也……」
初音が立ち上がった。
座っている俺の腕を取って、揃いの時計に手を置いた。
「私では頼りないかもしれませんけど……。私が空也の家族になります」
「それは……とても魅力的な案ではあるが……」
赤くなった頬を撫でる。
恥ずかしがりな初音にしては大胆な発言ではある。
しかし……。
「却下だ」
「何で?」
青ざめるように蒼白になる。
その顎を掴んで、引き寄せる。
薄い唇に口付ける。
何度か繰り返して放した。
「家族はこういうことはしないだろう」
見る間に耳まで赤くなって俯いた。
「だが、唯一の家族だ」
時計を掴んでその左手の薬指の付け根にキスをする。
一生側にいるその証として贈った時計。
恋人同士より互いを強く繋ぐものの証。
家族にはなれないが、『家族』である証。
「空也……」
少し掠れる初音の声。
同じように俺の左手を取って口付ける。
「私も、話があります」
少し緊張した様子がうかがえる。
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