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『辿』
「………音。初音。起きろ」
揺すられて目を開けた。開いたカーテンから入ってくる朝日の眩しさに目を細める。
「初音。起きろ」
「ん……おはよう……」
枕に俯せて顔を埋める。
リビングに続くドアが開いていて、卵の焼ける匂いとベーコンの香ばしい匂いがしてくる。
寝起きの空腹を刺激する匂いに一気に覚醒する。
起き上がってベッドに座ると空也が横に座って、「おはよう」と音をたててキスをした。
「……おは、ようございます」
「ほら」
眼鏡と時計を渡される。ぼーっとしていると「遅れるぞ」と言って空也は立ち上がってリビングに行ってしまった。
渡された眼鏡と時計を持ってリビングに向かう。
「空……これ……」
いつもは時計をはめてくれるのに何か急いでいたようで時計をはめてくれなかった。
椅子に座っている空也に時計を渡す。
「おはよう」
「……おはよう?」
さっきもおはようとあいさつをしたはずなのに……。
首を傾げていると、「初音。しっかり目を覚ませ」と横から声がして、目の前の空也から時計を奪うと、腕を取って時計をはめてくれた。
「顔洗ってこい」
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