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背中を押されて洗面所に向かう。
顔を洗って眼鏡をかけてリビングに戻る。
「…………」
「おはよう。奥様」
「………」
椅子に座っていたのは海さんだった。
「お前が寝ぼけてるからだ」
コーヒーを持ってきながら空也が笑った。背格好が似ていて、普段は空也しかいないからてっきり空也だと思ってしまった。
「どうせ空港までの通り道だからな、迎えに寄ったんだが、遅くなるなら先に行く」
「いや。もう出る。初音。急げ」
「は、はい」
慌てて自室に飛び込んで準備をする。と言っても昨日のうちに準備は出来ていたので、着替えるだけだったが。
空也は自分の準備も出来ていて、部屋の戸締まりも済んでいた。
それなら早く起こしてくれたら良かったのに。
「おはようございます」
マンションの駐車場では平沢さんがエンジンを掛けたワゴン車の前に立って待っていた。
「おはようございます」
車のドアを開けられて空也と共に後部座席に乗り込んだ。海さんは助手席に。
「空也。早く起こしてくださればよかったのに」
「お前が起きなかったんだ」
前を向いたまま空也が言う。
「ご、ごめんなさい?」
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