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 抱き寄せていた腕を放して、もう一度椅子に座り直す。 「その……家族のことを話して頂けてすごく嬉しいです。それで……私も話したいことというか……お願いがあります」 「ああ」 「私の両親は交通事故で15年前に亡くなりました。姉弟は4人で、一番上が、この間会った美音です。2番目が私。3番目は鷹音。一番下が愛音です」  一番上の美音には病院で会い、初音が倒れた時にマンションに来てもらったことがあるから、顔見知りではある。  多分……同居相手という関係だけじゃないことは気が付いているだろう。 「その……この時計をもらった覚悟というか……あの……私は家族と仲はいいんですよ。それで……両親の命日に一緒に、あっ姉弟は一緒じゃないのですけど、私とお墓参りに来てもらえませんか?」  いつもとは違う、俯かずに顔を上げて話す初音とその内容に感動する。 「いいのか?」 「嫌でなければですけど……」  その柔らかな髪を撫でて、左の腕を取って、時計ごと撫でる。 「嬉しいよ」 「ほ、本当に?」  唇が震えていて、その緊張が伝わる。 「ああ」  頷いて抱きしめる。 「嬉しいよ。初音」  震える背中に回した腕に力を込めた。
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