198人が本棚に入れています
本棚に追加
抱き寄せていた腕を放して、もう一度椅子に座り直す。
「その……家族のことを話して頂けてすごく嬉しいです。それで……私も話したいことというか……お願いがあります」
「ああ」
「私の両親は交通事故で15年前に亡くなりました。姉弟は4人で、一番上が、この間会った美音です。2番目が私。3番目は鷹音。一番下が愛音です」
一番上の美音には病院で会い、初音が倒れた時にマンションに来てもらったことがあるから、顔見知りではある。
多分……同居相手という関係だけじゃないことは気が付いているだろう。
「その……この時計をもらった覚悟というか……あの……私は家族と仲はいいんですよ。それで……両親の命日に一緒に、あっ姉弟は一緒じゃないのですけど、私とお墓参りに来てもらえませんか?」
いつもとは違う、俯かずに顔を上げて話す初音とその内容に感動する。
「いいのか?」
「嫌でなければですけど……」
その柔らかな髪を撫でて、左の腕を取って、時計ごと撫でる。
「嬉しいよ」
「ほ、本当に?」
唇が震えていて、その緊張が伝わる。
「ああ」
頷いて抱きしめる。
「嬉しいよ。初音」
震える背中に回した腕に力を込めた。
最初のコメントを投稿しよう!