8/10
前へ
/606ページ
次へ
 急いで側を離れた。  キッチンで見ていても仕方がないので、コーヒーを湧かす。  煙草を吸い終わるのを見計らって、コーヒーを出した。  時計を見るとまだ3時過ぎ。  空也が帰ってくるまで、2時間以上ある。 「初音。お前はどう見ても男のようだが、空也と同居しているのか?」  同居と男であることが何で関係あるのだろうか。それに初対面で呼び捨てって……。 「私は男ですけど、空也さんと同居しています」  長い足を組み替えて、こっちをジッと見つめる。  まるで品定めをするような目つきに嫌悪を感じる。  その視線が腕時計で止まる。  ジーンズにTシャツというラフな格好。今更隠すのも余計に不信に思われるかもしれない。 「お前、仕事は?」 「芸能事務所でマネージャーをしています」  驚いた顔をして何度か頷いた。 「何ですか?」  何か納得したように頷いているのが気になる。 「いや……。空也の気まぐれに付き合わされて大変だね」  そう言って笑う。  気まぐれ?  空也と同居していることが、空也の気まぐれということだろうか。 「その時計は空也にもらったのか?」
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加